響け!ユーフォニアム(感想) 2/2
2015 / 07 / 06 ( Mon ) 10:55:03
第12話感想――揺れ動く黄前久美子像――(後編)

1.まえがき

 以前、12話の久美子の描かれ方について簡単な感想を書きました。内容の大雑把さもさることながら、まだ非常に気になることが残っています。それは、久美子とユーフォニアムという楽器との関係性です。久美子は「うまくなりたい」という言葉と共に主役になりました。そして、それを支えていたのが「ユーフォが好きだから」という思いです。一見すると、姉に対する反発とも取れますが、この思いはどこから来たのでしょうか。何人かと比較しながら考えてみたいと思います。

2.久美子とユーフォニアム

 物語の冒頭では、久美子のユーフォニアムや吹奏楽への微妙な思いが描かれます。憧れのセーラー服もありますが、いろんなものを新しく始めたいという思いで北宇治に入学した彼女は、北宇治の吹奏楽部について事前にまったく情報を入手していません。吹奏楽部に入るかどうか決めていませんし、高坂さんの姿を認めると吹奏楽部を避けようとさえ考えます。しかし、マウスピースに一生懸命になる葉月たちと接するなかで入部を決めるあたり、吹奏楽への思いが見え隠れします。また、ユーフォニアムの代わりにチューバ君のストラップをつけていることから、ユーフォニアムへの愛着がないわけではありません。

 とはいえ、ユーフォニアムへの思いはそれほど感じられません。小学生の時ユーフォニアムになったのはなり手がいないからで、中学でもそれは同様です。あまつさえ、高校ではトロンボーンを選ぼうとします。また、葉月とサファイアが楽器に名前をつけるのに対し、久美子は名前をつけません。

3.サファイアとコントラバス

 冒頭から久美子と対照的に描かれるのがサファイアです。サファイアは必ず吹奏楽部に入ると決めており、コントラバスが大好きだと命かけてると繰り返します。また、コントラバスを選ぶときは「目が合った」といい、率先して名前をつけます。楽器を人間のように愛情持って接し、楽器の痛みは奏者にも伝わると楽器と奏者は一体と言わんばかりでもあります。また、直接練習シーンが描かれることは少ないですが、非常に熱心に練習していることがしばしば描かれます。音楽が、コントラバスが好きだからこそ熱心に練習するということがはっきりとわかります。

4.葉月とチューバ

 好奇心旺盛で行動力の溢れる葉月は、運命(と策略)に導かれてチューバを選びます。そして、彼女もサファイアと同じようにチューバに名前をつけます。やるからには一生懸命やりたいと、時には重いチューバを持ち帰り熱心に練習をします。しかし、なかなか上達せず苦しみを抱えます。久美子は、頑張ってもなかなか上達しないのは周りが思っている以上に本人は深刻だと、自身の経験から率先してフォローに走ります。葉月は久美子とサファイアの3人でアンサンブルをし、音楽とチューバの魅力を感じとります。

5.高坂さんとトランペット

 高坂さんのトランペットへの思いはなかなか語られません。しかし、8話でトランペットなら特別になれると、確信を持って語ります。作中では要所要所で練習する様子が挿入されます。彼女にとってはトランペットがアイデンティティであることははっきりと伝わります。そして8話で「愛を見つけた場所」を久美子と一緒に吹こうとするとき、「好きなの」とさらりと言いますが、彼女なりに思い入れを持って吹奏楽をやって来たのだと感じ取れます。

6.わたしのユーフォニアム

 オーディションの待ち時間、久美子はユーフォニアムをぶつけてしまい、思わず痛いと言ってしまいます。そこで、サファイアは楽器と奏者は一心同体であると言います。その前にはそれと対応するように、中学で先輩とのいざこざでユーフォニアムをぶつけて痛いと苦しむ様子も挿入されています。久美子とユーフォニアムの親密さが表現され、同時にサファイアによって、葉月とサファイア同様ユーフォニアムへの命名も行われます。

 それだけではありません。久美子は葉月にかつての自分を重ね合わせます。高坂さんに導かれるように、うまくなりたいと誰にも負けたくないと思います(そこには特別になりたいという思いと通底します)。そして、サファイアのように懸命に練習をします。久美子とユーフォニアムの思いは、他の部員と通ずるものがあるように描かれています。特に、楽器への愛をはっきりと語るサファイアと同様に熱心に練習をしはじめた直後に、「ユーフォが好きだから」「うまくなりたい」とその思いが語られます。

 久美子のユーフォニアムへの思いは、時に中学からの淡い思いを深めるように、時に他の部員と重なるように描かれながら、12話で結実するのです。久美子のユーフォニアムへの思いは、単に無自覚だった思いに気づくわけでもなく、高校になって新しく好きになったのでもなく、きっとその両方なのでしょう。12話に注目すると練習することと好きであることが安易に結び付いているようにも見えますが、久美子の思いは少しずつ着実に描かれています。

7.まとめ

 ここでは簡単な要素を拾い上げましたが、本当はもっと複雑な思いが隠れているはずです。秀一との関係、姉との関係、オーディションに受かったこと、中学とのつながり……。たとえば、葉月がチューバを持って帰って練習するのに触発されユーフォニアムを持ち帰ったり、秀一がひとり練習するのを見てうまくなりたいとつぶやくなど、感化されやすい性格も見えます。そういったあれこれを含めた中で久美子は確かにユーフォニアムが好きなのです。久美子にとっても、この思いは意外だったのでしょう。だから滝先生を通して自分の思いが間違っていないと確認する必要があったのです(もしかすると、視聴者の意外に思う気持ちを緩和するためにもあったかもしれませんね)。

 久美子とユーフォニアムの関係は、他の部員と楽器との関係を映し、それゆえにある種物語を総括する力があるのかもしれません。久美子のいちばんの「特別」は、ひょっとすると、こんなありふれた思いなのかもしれません。

8.おまけ

 この感想を書いていて、改めて高坂さんと中世古先輩の重要性というのを感じました。物語中、高坂さんは「特別」な人として、重要な場面でしばしばトランペットを吹いています。3話の『新世界より』が印象的ですよね。その彼女と対等に演奏するのは、8話の久美子と11話の中世古先輩だけです。この作品が、特別になる物語とするならば、「特別」の「特別な人」になった久美子、「特別」に並ぼうとする中世古先輩、そして「特別」な高坂さんは、それぞれ異なる形でこの物語の主人公なのかもしれません。というこじつけです。
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