赤髪の白雪姫(感想)
2015 / 07 / 18 ( Sat ) 23:17:22
あきづき空太『赤髪の白雪姫』(アニメ)(ボンズ/原作:漫画)

赤髪の白雪姫 第1話 感想――「物語」は誰のものか――

1.はじめに

 アニメ化決定前から原作を全巻そろえてたので、放送開始前からずっと楽しみに待ってました。そして、期待以上の出来。そんなわけで、絶賛ひいき目であれこれ感想を書いていきます。
 なお、このアニメの良さはぱんさん(@frenchpan)のブログ(http://www.palepalette-blog.com/entry/2015/07/09/133325)を読んだら分かるのでぜひお読みください。単にこの作品の魅力を語るならば、ぱんさんのブログを読んだ方が良いことにしかならなさそうなので、今回は原作と比較しながら、変更点から感じたことについてまとめていきます。基本的には、以前某所で簡単に書いたものと同じ内容になります。
 ネタバレたっぷりなので、続きからどうぞ。

2.「白雪」像の違い

 原作とアニメ版の「白雪」の違いは、簡単に言うと原作は漫画らしく、アニメ版はアニメらしいというごくごく当たり前の違いです。もうちょっと言うと、原作の方が人間らしい感情がよく見え、アニメ版では裏表のなさがはっきりしています。
 たとえば、原作では1ページ目にラジ王子が美しい娘はいないかと従者に聞く場面で始まり、2ページ目には最初のコマでいきなり白雪の顔が正面からアップで、城に来いと伝えられたことに対するリアクションが描かれます。そのコマでは、「冗談きついよ」という心の声が、顔の右側に太い吹き出し・太く大きな文字で書かれています。一方で、顔の左側には使いに断りを入れるセリフが普通の吹き出し、普通の文字で書かれています。ここでは、「何を言ってんだこいつ」みたいな様子なのですが、アニメ版では単純に困っているように描かれます(直後に灯りの消えた部屋で椅子に座って俯いているシーンが挿入されています)。
 他にも、ゼンにフードを取られ「変わった髪を持ってるな?」と言われた際に、どちらも「そうですね、よく言われます」と答えるのですが、原作では「しまった」という心の声が書かれ表情も取りつくような笑顔です。一方で、アニメ版では、今の自分の状況を招いた元凶だからでしょう、困った表情をして、俯くようにゼンから視線を外します。この後、ゼンが治療を拒んだ時も、どちらも「上から物を言う人はどこにもいるんだ」というモノローグが入りますが、原作では「やかましいな……」と続きます。そして、「思ったより痛い」と手書きで書かれます。さらに、ラジ王子と対面した際、「友人への薬を頂けるのでは?」と作り笑顔で要求しているのですが、アニメでは必死で薬を求めています。さらに、原作ではラジ王子が「私の評判が地に堕ちかねない」というところに、「もともと落ちるほどの高さにないよ」と内心毒づいていもいます。
 原作ではこういった人間らしい感情がある種コメディタッチを伴いつつ描かれているわけですが(それと同時に作り笑顔も目立ちます)、アニメ版はこういった要素を排除して裏表のないキャラクターとして描かれています。状況に対して素直な感情が表現されています。冒頭で薬剤師としての仕事の様子が追加され、そこでも素直で人の良さが強調されています。ラジ王子の手を払いのける場面も、原作では作り笑いなのですが、明確に怒りの表情、仕草が描かれてます。
 また、ゼンとの距離感の問題も生まれてきます。原作では空き家に入って事情を聴かれた際「だから、私の家出の理由なんてゼンが知っても面白くないって言ってるんだよ」と明確に突っぱね、包帯を結ぶのを途中にして出ていきます。また、ラジからリンゴが届けられ、ゼンと差し向かいで話す場面も、アニメだと落ち込んだ様子が見られますが、原作ではずいぶん取り繕っています。このように、原作では他人と距離を取ろうともします。

3.「物語」の展開の違い

 細かな違いはたくさんあるのですが、2か所原作とアニメでは大きな違いがあります。1か所目は冒頭です。原作では「白雪姫」よろしく、ラジ王子の「鏡よ鏡」のくだりからはじまります。しかし、アニメ版では白雪が薬草を採取しに出かけます。そして、モノローグで「これは、自分の行く道。自分の物語。願うなら、この道の先も、自分で描けるように」と挿入されます。
 そしてもう1点、旅に出るシーンです。原作では「3日後」に迎え入れるから身支度をと迫られます。この時、特に落ち込む様子は描かれず、「……逆らえないか。馬鹿と名高い人とはいえ相手が王子じゃ……/――仕方ない」というセリフの後、「自分のゆく道/いわば自分の物語/他人の筆で描かれたくない」というモノローグが挿入されます。続けていきなり食料を食べながら森を歩いており、空き家をっており、暗くなるころに空き家にたどり着きその前で夜を明かします。
 一方、アニメでは「翌日」に迎えが来ると告げられ、前述のように途方に暮れます。タンバルンや町の人々、自らの生活と別れを告げる事への未練が随所に見られます。また、食量は明け方馬車で食べており、空き家の前で座り込み、「勝手に入るわけにはいかないし……暗くなってきたし……」とつぶやいた後続けて「お腹もすいてきたし……」と俯いて膝をさらに抱え込みます。こうして、原作よりもはっきりと弱気になっています。原作のような、他人に自分の人生を決められたくないから国を出るんだという描写から、運命に翻弄されまさに逃げ出しています。そこには余裕もずいぶんと見られなくなっています。

4.「物語」は誰のもの?

 キャラクター造形や展開への違いを追ってきましたが、ここで原作とアニメ版の最大の違いについて述べたいと思います。それは、作中でしばしば語られた「物語」の所在です。
 原作もアニメも、自分の物語は自分で描きたいという白雪の思いがあります。しかしながら、それに関する表現は随所異なります。原作では、ラジ王子の迎えに反発し自分で道を切り開くために国を出ています。そして、最後のシーン、ゼンに手を差し伸べられたところで、左ページの左下のコマにふたりの手が触れ合いそうな絵が入り、次のページでは右上に窓が切り取られたようなコマがあり、全体では「願うならこの出会いの道の先……」とアニメと同様のモノローグが書かれるとともに、薬と思しき小瓶と開かれた本のみが描かれます。この表現から、ラストシーンは「昔々ある所に」のように、作品全体をひとつの物語としてまとめられています。いわば「赤髪の白雪姫」という一つの物語をメタ的に表現しています。
 一方、アニメでは、自分の物語は自分で描きたいという思いが、タンバルンの広い世界を見渡しながらモノローグとして語られます。こちらでは、さしずめ広い世界の中で自由に生きたいといった雰囲気があります。そして、ラストシーンではゼンに手を差し伸べられ、それに白雪が手を重ねる様子がはっきりと描かれます。そして、最後のカットは立っているゼンと座っている白雪が手を重ねているところとなります。この時、背景には窓から明るい光が差し込み、あたかもゼンが白雪を引き上げるかのようになっています。白雪もゼンを見上げるように、その表情は自らの希望を感じているようにも、ゼンをまぶしく思っているようにも見えます。
 ここで思い出したいのは、前述した原作との展開の違いです。白雪は「逃げ出し」て弱気になったところをゼンに出会っています。これは、単なる出会いではなく、白雪にとって「助け」なのです。
 原作ではゼンの手を取ることは白雪の「選択」であるという比重は極めて大きいものでした。しかし、アニメ版ではゼンに救われている、導かれているという「運命」の比重が大きくなっています。そして、最後のカットが手を取り合う二人の姿になることで、「二人の物語」あるいは「ゼンに導かれる物語」となっています。ともすると、冒頭に描かれた自由な世界に自由に生きて行けるように連れ出してもらったと、うがった見方も出来るかもしれません。
 原作では、白雪が「選択」することで「物語」は確かに白雪のものでした。しかし、アニメ版では「物語」は「運命」として作用しており、白雪自身で描くことのできる割合は減っています。そのかわり、ゼンとの関わりが強調されており、「物語」はゼンとの間、あるいはゼンの側に存在しています。

5.おわりに

 原作とアニメ版の間には実に様々な違いがあります。詳しくは触れませんでしたが、アニメでは白雪は素直なキャラクターへと変化していますが、それだけにはっきりと自身の感情と行動を露わにしています。全体としてはゼンに導かれる、助けられるという形を取りながらも、随所では原作以上に自身で行動を選び取っています。凛としていると言ってもいいでしょう。原作では作り笑いを多用し、「凛とした」「まっすぐ」というよりは強かさが強調されています。その、新しい魅力を備えたキャラクターが、これから先どのように「物語」を自分のものにしていくか、それに期待したいと思います。

6.おまけ

 アニメ版、細かなところがたくさん変更されていて面白いんですよね。個人的にいちばん好きだったのは、白雪とゼンが話しているところをミツヒデと木々が覗くシーンです。この時、ミツヒデはうさぎを撫でているんですよね。おそらく、二人が話している時、画面下方で走り去っていくウサギだと思うんですけど、地味にかわいくて大好きです。
 他にも注目したいシーンとして、ラジ王子がリンゴ落とすシーンです。この時、リンゴに白雪の姿が映り込んでいるんですよね。作中では、瞳をはじめキャラクターが物に映り込むシーンはないんですよね。別の言い方をすると、リンゴだけが白雪を映し出しているとも言えます。
 あと、忘れちゃいけないのが、ラジ王子。奇妙な動きがいっぱいで、言動と合わせて実に小物っぽい。これは本当に見事ですよね。すっごくキャラ立っています。
 そんなこんなで、面白いシーンがたっぷりあるのでぜひ原作を片手に見比べてみてください。原作の表情の豊かさにも驚かされますし、とにかく見れば見るほど楽しめます。

 ……それよりも早くオビを登場させてください!
スポンサーサイト
アニメ TB:0 CM:0 admin page top↑
<<赤髪の白雪姫(感想) その2 * HOME * 響け!ユーフォニアム(感想) 2/2>>
コメントの投稿 














管理者にだけ表示を許可する

 

*Comment  Thank you*
comment
trackback
trackback URL
http://komagomamako.blog.fc2.com/tb.php/15-1866dd05
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
* HOME *