赤髪の白雪姫(感想) その2
2015 / 07 / 23 ( Thu ) 18:38:45
あきづき空太『赤髪の白雪姫』(アニメ)(ボンズ/原作:漫画)

赤髪の白雪姫 第2話 感想 ――原作にはない新しい魅力――

1.はじめに

 前回に引き続き、今回もアニメ『赤髪の白雪姫』の感想です。第2話もとっても素敵でした。この作品の魅力は、ぱんさん(@frenchpan)のブログ(http://www.palepalette-blog.com/entry/2015/07/15/011109)の方がよっぽど伝わってくると思うのでぜひお読みください。というわけで、前回と同じく原作との比較からその魅力について書いていきたいと思います(もともと原作を読んでいるので、その比較をしながらアニメを楽しんでいるというのも相当あります)。その中でも、今回は原作にはないアニメ版の魅力を中心に書くつもりです。

2.展開上の相違

 第1話はほぼ原作準拠だったのですが、第2話は大幅な改変が加えられています。原作では、クラリネスでの白雪の生活は描かれておらず、城の中に入ってゼンと再会しています。また馬車のシーンはカットされ、ゼンとの港での会話は宮廷薬剤師を目指すことを伝えるものとなります。巳早の身の上も特に語られず、巳早に薬を渡すシーンも存在しません。
 このようにかなり多くのシーンが追加され、ラストの橋でのゼンとの会話など共通するシーンも多くの改編が加えられています。ここから、原作にはない新しい魅力がたくさん生まれています。

3.白雪の新たな一面

 前述のようにアニメ版ではたくさんのシーンが追加されています。第1話と共通して追加されているのは白雪の生活です。原作では紙幅の関係もあって、城の外での白雪の生活はほとんど描かれません。また、城と関わらない人も、物語の展開上関わらなければ描写されることは少ないです。それが、第1話では薬剤師として働く様子が、第2話では宿舎での人間関係や馬車に乗る人々などが描かれています。
 人々との触れ合いの中で、みんなから愛され心優しい白雪の人柄がはっきり伝わってきます。冒頭では、パン屋のおばちゃん(クレジットより)に「お肌もつるつるになりますよ」とお茶目に笑い、馬車で子供に「林檎みたいにおいしそうでしょ」と気遣う様子が見られます。笑顔一つでも、おばちゃんにみせる時や城門でゼンを追いかける時、子供に笑いかける時などそれぞれ異なっており、その豊かな表情からは、単純に目を楽しませてくれるだけではなく、白雪の人柄を感じることが出来ます。原作では2話以降、作り笑いが描かれることがほとんどなくなるのですが(作り笑いを向ける必要がないためです)、前回書いたように第1話では作り笑いが多用されており、誰に対しても屈託なく笑う姿は新しい一面と言えます。
 また、原作ではゼンが港まで送ると言ったことに対して「どうも…」とリアクションが薄く、「なんだ、会えたな」というゼンの言葉にもどこかはっとしているような形容しがたい表情でほほえんだりしていません。アニメ版では前者には笑ってゼンを追いかけ、後者は嬉しそうな表情を見せています。町の様子を見る時や薬草を見つけた時の嬉しそうな顔からも、好奇心があり物事を楽しむ姿勢も感じられます。
 さらに、巳早に捕えられてからは、原作ではすぐに逃亡したのですが、アニメ版では一晩ゆっくり縄を削る判断力や精神力など、白雪のたくましさが分かります。それでいて、原作では木につかまってからきちんと着地できるのですが、見事に木から落ちる様子は必死さと余裕のなさが出てきていいですね。
 そんなこんなで、原作にはない新たな表情、新たな姿が、原作にはない新たな一面として楽しんでいます。

4.ゼンの新たな一面

 ゼンに関しては、原作を読んでいるとイメージとは違うところがかなりありました。白雪以上にゼンの改変が大きいですね。
 いちばん驚いたのは、最後の橋のシーンで「俺は、城の外の事を知れるだけで楽しかった。けど、知った後に出来ることが何かあるのかもしれない」というセリフです。原作ではゼンは自分が王子であるという自覚は十分持っています。周囲が自分に王子として期待するものがあるということもきちんと受け止めています。ゼン自身の好奇心はありますが、「外の事はすぐわからなくなるからな」「国は――クラリネスは城の外に広がってる」(3話)というセリフから、あるいは場内外の人々の様子も知りたがるところから、王子としても国の外を知るべきだと思っているのだと思っていました。それだけに、アニメ版は本当にただ城の外を知りたいのかというショックがあったのです。また、白雪への見送りをミツヒデから逃げ出すように行くのも、原作よりも自由奔放な王子というイメージが強くあります。
 それは、「ここにはまだ、俺の知らない魅力が山ほど隠れている気がするんだ。だからも、もっといろんなものを見たい。知ってみたい」というセリフは、1話の冒頭の広い世界で奔放に生きようとする白雪にも重なるものがあります。王子ではなく、ひとりの人間としてこの広い世界に引きつけられているのだと。

5.白雪とゼンの新たな関係

 前回の感想で、ゼンが白雪を導くという色合いが強くなっていることを書きました。しかし、今回の話で見えたことは、二人の関係が支え合う関係へとよりシフトしていく可能性です。
 すでに前回、アニメ版では白雪は逃げるように国を出たという改変について触れました。第2話冒頭では「運命に流されそうになった」というモノローグが流れます。ここからも、白雪が逃げ出しゼンが導く形になったことが示されています。
 第2話では、また少し変化していきます。特にゼン王子の変化からそれが見えてきます。白雪とゼンは町娘と第二王子ということで身分差、背負っている者が違います。原作では、それが二人の壁となりつつも、そこに捉われない姿勢も描かれます。どちらも強く自立した人物ともいえます(原作2話で宮廷薬剤師を目指すと早くに伝え、「」)。それに対し、アニメ版では二人とも、弱さを抱えていたり似ているところがあったりしてお互い支え合う関係が強調されます。
 白雪自身は「運命に流されそうになった」ところをゼンに助けられています。一方で、ゼン自身も至らないところを自覚し始めています。それが、橋のシーンでの「何かできることがあるのかもしれない」という発見です(どうしてこのセリフが出て来たのかよく分からないのですが)。また、自由奔放な王子像というところからも、王子としての至らなさがにじみ出ています。
 このようにゼンも白雪同様、原作よりは「弱い」人間というイメージがやや出ています。それでいて、この広い世界で自由に生きていきたいという思いに共感し合い、支え合います。事実、港で白雪は全への共感を示し、ゼンは白雪が頑張っていることを思い出し嫌な執務も頑張ろうとします(原作でも後者は同じなのですが、これほど早い段階で出てくるのがひとつ。また、原作では「運命に立ち向かう」「自身の背負っているものと向き合う」といった趣が強いのに対し、アニメでは「嫌なことをちゃんとやる」と少々イメージが異なっています)。さらに、ラストの白雪のモノローグで「もし立ち止まってしまっても」という言葉が「きっと眩しい追い風は吹く」の前に新しく挿入されています。原作では単なる希望の言葉のようにも聞こえましたが、この挿入一つでまるで周囲が助けてくれるというイメージが強くなってしまいます。そして、それはここまで丁寧につながりを描いてきた町の人々でもありますが、何よりゼンの事になるでしょう。

6.まとめ

 アニメ版と原作では展開はおおよそ同じでも、アニメでたくさんのシーンが追加されています。そこでは、原作にはない白雪の姿がたくさん描かれており、新しい白雪の魅力がたくさん描かれています。
 それと同時に、白雪とゼンの関係の違いも確かに描かれています。原作では白雪とゼンはその対等性と非対等性の両面が描かれそれが絶妙なバランスを保っています。基本的には白雪はゼンの助けをある意味で拒みつつ(自分の力で切り開いていけるように。結果として、ゼンの権力に助けられていることも承知しています)、自分でゼンと同じところまで立てるようにというスタンスがあります。ゼンが王子として生きているという事も自覚しています。
 それが、アニメでは白雪はもっとはっきりとゼンに助けられる構図になっています。しかし、それとバランスを取るように、ゼン自身も自分の至らなさ、王子としての未熟さがいっそう出ています。だからこそ、二人はより支え合う関係へとシフトしていっています。これらは、白雪やゼンの新しい一面と関わり合いながら、アニメの新しい世界観を生み出しています。
 白雪とゼンの関係が今後どのようになるのか、このままの路線でいくのかどうなのか。とても楽しみです。

7.おまけ

 クラリネスでの生活、人々の様子が描かれることで「ここが私の立つ国、立つ町、立つ道」といった言葉が生き生きとしています。原作ではクラリネスという国が舞台というよりはあくまでも王城が舞台の物語となっています。それだけに、国の様子、白雪の生活が描写されているアニメ版において、白雪が「この国でゼンがどんな風に生きてるのか見たいと思って」という原作とアニメの共通の台詞も、原作以上に生きてきます。そして、白雪の「道」というのは、ただ自分の人生、ゼンとの関わりだけではなく、もっと広い人々とにつながりや土地との関わり、そういったものも感じられてきます。
 また、今回も音楽が良いですね。特にいいのが、巳早の初登場シーン。どこかRPGの洞窟などのダンジョンを想起させるような、不安な感じがいいですね。明るい背景、警戒に動く白雪の背後にこの不穏な音楽が流れるどきどき感、たまりません。
 それと、白雪の脱出シーンで白雪が木につかまってから落ちる所もすっごくいいですね。まず、木から地面をゆれるカメラで素早く映し、臨場感がぐっと高まります。そこから、正面で白雪が飛び出してきます。そして、必死で木に掴まりゆらゆら揺れる体。単純に見ていてすごく楽しいシーンでした。
 メガネに白雪の姿が映されるシーンもまた良いですね。まさに色眼鏡で見ると言いますか。
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