ひとりぼっちの地球侵略(感想) その2
2015 / 09 / 09 ( Wed ) 11:39:07
小川麻衣子『ひとりぼっちの地球侵略』(ゲッサン/小学館)

ひとりぼっちの地球侵略 感想その2 ――心臓、首輪、傷――

1.はじめに

 『ひとりぼっちの地球侵略』について自由に書いていいってなると、おおよそ書きたい方向性としては前回書いたことと変わらないのですが、諸事情であれで書くのはどうだろうと思うことが多くありまして。じゃあほかに何が書きたいかと考えた時に出てきたのが『魚の見る夢』でした。かたや心臓、かたや首輪でどこか通ずるものを感じた記憶があったためです。この作品と合わせて何か作品の魅力を引き出せたらと思い書いてみます。多少どころか大いに時間に限界がありますが、頑張ります。
 今回のブログは『ひとりぼっちの地球侵略』の1巻から8巻までと『魚の見る夢』の全巻のネタバレを含みます。また、『魚の見る夢』を未読の方は、2,4,5,7,8だけ読んでいただいても分かるようにしています。また、本稿はさいむさんのブログに多くを負っていますので、適宜ご参照ください(http://thursdayman.hatenablog.com/)。

2.ひとりぼっちの地球侵略と魚の見る夢

 『ひとりぼっちの地球侵略』と『魚を見る夢』二作品がともに同じ作者だという事を知っていれば、絵柄やコマ割、その他表現から十分に納得できる作品になっています。知らなかったとしても、同じ作者だと分かったとしても不思議ではありません。そのあたりは実際に読んでみて感じて戴けたらと思いますので、詳述はしません。
 さて、『ひとりぼっちの地球侵略』は主人公の広瀬岬一とヒロイン大鳥希が心臓を通して繋がる作品です。それに対して、『魚の見る夢』の周防姉妹は血縁関係を通して繋がっています。どこか似ているようで、違う関係があります。『ひとりぼっちの地球侵略』では、「この人は私の片割れなの」(3巻)から「広瀬君と一つになれるんだね…」(8巻)という関係が見て取れる一方、『魚の見る夢』では「だけど一緒にいないと何かおかしいんです/離れがたいんです」(2巻)という関係が描かれています。『ひとりぼっちの地球侵略』は心臓を通して繋がりそして一つになるのですが、『魚の見る夢』では一つにはならない。一緒にいるのです。この関係は、双子である岬一と凪との関係とも異なります。『ひとりぼっちの地球侵略』はまだ連載中の作品である以上、岬一と凪の関係は今後も変化するでしょうが、少なくとも現時点では異なっています。岬一と凪は、大鳥希陣営とマーヤ陣営との対立を担いつつ、凪から岬一への異常な執着があり、また二人はすれ違っていきます。
 本稿では、この広瀬君と大鳥先輩、岬一と凪、巴と御影の三人の関係性について見ていきたいと思います。前述しましたように、ブログ大会の性質上、『魚の見る夢』について知らなくてもおおよそ理解できるように書いていきますのでご安心ください。『魚の見る夢』を未読の方は、3、6については飛ばしていただいても構いません。

3.首輪

※『魚の見る夢』のネタバレがあります。読み飛ばしていただいても構いません。

 『魚の見る夢』はとても複雑な作品です。行間を読みにくいという事もあるのですが、様々な要素が重層的になっており、それを読むのが私には少々きついものがあります。それはさておき、『魚の見る夢』を簡単に整理していきましょう。
 巴と御影は姉妹で、巴が姉で御影が妹です。母親は早くに亡くなっており、父親は度の過ぎる放任主義、ネグレクトの可能性もないわけではないくらいです。御影は母親に似ており父親がその面影を見出す一方で、巴は父親似です。その上、巴は御影を世話するという関係にもあります。すなわち、巴と御影は姉妹であり、擬似的な親子であり、また擬似的な夫婦でもあるという複雑な立場を負っているのです。
 その中で、二人の関係がどのように変化していくのは(少なくとも私には)容易ではありません。また、本稿はそれを追うこと自体が目的でもありませんのでほどほどにしたいと思います。
 とはいえ、二人の関係でいくつか抑えなければならないところがあります。何よりも重要なのは、転換点あるいは二人を決定づける2巻の10話です。巴は「安心したい…「形」がほしい…」と「家族」や「友達」といった形が欲しい本音をもらしますが、御影はそれを拒否します。そのかわり、一緒にいると伝えるのです。それは、妹としてでもなければ家族としてでもなく、巴の事が好きな一人の人間としてです。そして、それを巴は受け入れるのです。
 二人をつなぐのものは今や「家族」や「姉妹」という血縁を乗り越えつつあります。御影は「最初から巴に感情を抱いていたわけではない/私たちの場合はじわじわじわじわ時間をかけてだんだんと/小さいころからずっと見てきた」(2巻)とあるように、きっかけには血縁があるのかもしれませんが、それを乗り越えて「新しい関係」にあるのです。
 この漫画の見どころの一つである1巻の冒頭で「首輪」が出てきます。なぜ御影が巴に首輪をしたのかというと「巴は最近私以外の事に気を取られてるね/巴は私のことだけ考えてればいい」(1巻)からです。「妹」であることは巴への枷や所有の証として二人をつなぐのあり(ただし、完全な一方通行ではありません)、それだけでは御影の望む関係は生まれないのです。だからこそ、巴が御影を心配したことで首輪は「もう必要ない」のであり、物語は二人がお互いを受け入れるまでの段階が必要だったのでしょう。

4.双子

 広瀬君と大鳥先輩について考える前に、まず『ひとりぼっちの地球侵略』の兄弟、岬一と凪について考えていきましょう。岬一と凪は双子です。広瀬家は、年の離れた龍介と次男の凪、三男の岬一という三人兄弟です。
 二人の関係性もまた複雑です。岬一の視点と凪の視点で必ずしも同じ風に見えるというわけではありません。岬一は凪のことを思っているのは確かです。4巻の幼いころには「凪のためたならなんでもしてあげたいのに…/だからせめて凪が言うなら凪のために死ぬよ」(4巻)という言葉や、凪は自分のことを嫌っていないと大鳥先輩に反抗したことなどが見られます。しかし、港が開かれ星が侵略され始めると「お願い!喫茶店まで連れてって/あそこにはお父さんとお母さんもいるの…」と祖父の喫茶店へ行こうとします。それはもちろん岬一は「凪のために死」んでいるのですから、凪のいる病院には行くわけはありません。それでも、岬一が凪よりも両親を優先したことは確かです。
 凪と再会した岬一は「捜しにきてくれたの…」と喜びを表します(つまり、岬一は凪を探していたわけではないのです)。そこで二人は手を繋ぎながら死ぬわけですが、岬一にとってはここから大鳥先輩に心臓をもらって助けられ、「誰だろう…大切に思ったはずなんだけど」と振り返るところまでで過去は終わります。あくまでも、あの過去の大切なポイントは大鳥先輩にあるのです。
 これが7巻の凪の視点になると、少し変わります。岬一が行方不明になったことを知った時、「この瞬間俺の中で何かがはじけた。/世界の全てが嚙み合って、完璧になった気がした」と思います。そして、「でも岬一には全部見ぬかれてたんだな」「俺たち…双子だもんな…」「俺と岬一がいて…通じ合ってて…それだけで世界が満ちていて…/これが、これこそが、/パーフェクトワールドだ」と、二人だけの世界を信じます。ここで、すでに岬一と凪のずれが出ています。岬一は「パーフェクトワールド」を信じてはいないのですから。そして、「パーフェクトワールド」の完成は大鳥先輩の手によって邪魔されてもいます。7巻以降、大鳥先輩とマーヤの対立に合わせて、岬一と凪も対立します(特に大鳥先輩の件でははっきりと対立しています)。さらには、さいむさんが指摘するように、8巻の最後でふたりはお互いに気付かずすれ違う様子も描かれます。
 このすれ違いからも分かるように、二人が双子であるというだけでは通じ合わないのです。もともと双子であるけれども別の人間であるという強い意識が凪にみえています。そして、大鳥先輩が現れた今、彼女をめぐって二人は対立しています。凪は岬一に対して大鳥先輩と手を切るように、どうして大鳥先輩と一緒にいるのかと詰め寄ります。果たして、今の岬一は凪のために死ぬことが出来るのでしょうか。凪が岬一を思うほど(あるいは執着するほど)、岬一は凪を思っているのでしょうか。ここは物語の進展によって何らかの形で解消されるはずですので、今は待つしかないのですが。
 龍介との関係も少し注意したい事があります。「じーちゃんはでかい。龍兄も最近でかくなってきた」「じいちゃんも子供の頃は体が小さかったって言ってたぞ。/広瀬家は晩成型らしい」(7巻)とあります。広瀬家は家族として似ているのです。これは、兄弟のようないわば横の血のつながりではなく縦の血のつながりです。『魚の見る夢』でも、巴と御影は似ていませんが、強烈に親と子のつながりが意識されています。そして、姉妹とは「形」でありました。血は、特に横のつながりにおいて「形」以上のものになるには他のものが必要となってくるのではないでしょうか。広瀬家の三人息子は、書店に入り浸る龍介、自由に生きたい凪、喫茶店を継ぎたいという岬一とそれぞれ異なる思いも抱えており、兄弟だからといって同じ人間ではなく、生き方も異なります。彼らが形を超えてつながることは自明ではないのでしょう。

5.心臓

 広瀬君と大鳥先輩を繋ぐのはもちろん心臓です。10年前に広瀬君は侵略者に撃たれ死んでしまったところを、大鳥先輩から心臓をもらい生き延びます。そしてその心臓は広瀬君と「同化」します(1巻、4巻)。やがて、前述のように3巻では大鳥先輩は広瀬君を「片割れ」といい、8巻では「一つになれる」と言います。広瀬君と大鳥先輩の当初の関係は、さいむさんがブログの随所でご指摘のように、心臓があるからただ自分と対等な存在になっているにすぎません。しかし、心臓がなければ広瀬君は「たかが虫ケラ」(4巻)にすぎないのです。
 もちろん二人の関係は心臓がなければ生まれなかったわけですが、かといって全面的に心臓が負っているわけでもありません。そもそも、どうして広瀬君が心臓を持つことになったのか。それは、「虫ケラ」だった広瀬君に大鳥先輩が心臓を与えたからにほかなりません。大鳥先輩は「こんなこどもに期待した方が馬鹿だったんだ…/誰でもよかったんじゃない…お前と一緒にすごしたのが楽しかったから…」(4巻)から広瀬君に心臓を与えたのです(もちろんそこには、大鳥先輩が失敗故に絶望したからというのもあります)。広瀬君が「虫ケラ」からそれなりには大切な存在へと変わったのは、それまでの「暇つぶし」の時間があったからです。そして、「ひとりぼっちになっちゃった」大鳥先輩に「ぼくが仲間になる…」と言ったからでしょう。そう、心臓がなくとも二人は繋がることができたのです(ただし、それが「仲間」ではなく「仲良く」に過ぎないことはさいむさんがご指摘されています)。そして、さいむさんがご指摘のようにこの4巻は1巻の裏返しではありますが、同時に、時系列は逆転していますが、広瀬君がひとりぼっちの大鳥先輩の仲間になる/なろうとする1巻の反復でもあります。1巻で心臓を持つがゆえに仲間になった二人ですが、1巻の4話でようやく広瀬君が自分自身で大鳥先輩のために仲間になることを選択するのです。
 二人は段階ごとにその関係を深めていくわけですが、そこはさいむさんがすでに書かれていることですのでそれについては省略します。ここで、8巻で大鳥先輩の心臓が広瀬君にいっそう同化し始めていることが分かった後の会話を見ましょう。「先輩に心臓をもらって…宇宙人と戦って…色々痛いこととかつらいこともあるけど、嫌じゃなかったし、割りと楽しいし…/だから/一生大切にするよ」と言っているのです。二人を繋ぐものの中核に確かに心臓はありました。しかし、二人は様々な経験を経て関係を深めてきました。この瞬間の絆は、決して仕方がないからでも、脅されたわけでもありません。広瀬君自身がそう望んでいるのです。そして、広瀬君を大鳥先輩の「片割れ」「一つなれる」ものたらしめている「心臓」を受け入れているのです。
 ただ、少し考えなければならないことがあります。そもそも、広瀬君と同化しているのは大鳥先輩の「心臓」であって大鳥先輩自身ではないのです。心臓がオルベリオの力の源のようなものであり、それを広瀬君に分け与えたために弱くなってしまっています。それを、広瀬君はすぐに気付き、「お前って本当に強いの?/強いって言ってたけど、こないだだってボロボロになってようやく勝てたんじゃないか!/ああ、そうか…俺に心臓渡したからか…?」(1巻)とも言うほどです。そういう点では、心臓が大鳥先輩の本質に近いものではあるかもしれません。だから二人は深いところでつながっていると言えますし、以前よりもつながりが深くなったと言えるでしょう。それでも、大鳥先輩は確かに存在しており、広瀬君はその大鳥先輩と向かい合っているのです。
 だからこその「匂い」がでてきます。さいむさんとすぱんくさんがご指摘されていますが、8巻で大鳥先輩は広瀬君の匂いを通して、心臓以外の絆で広瀬君の存在を確かめています。心臓が同化しても、二人が十全につながるかというとそうではなく、心臓以外の絆が必要になるのです。
 もう一つ、8巻で注意しなければならないことがあります。8巻で広瀬君と大鳥先輩がそれぞれ認識する相手との関係性の違いです。これまで大鳥先輩は広瀬君を心臓を始点に徐々に理解していきます。そして、8巻になって匂いを通して心臓を介せず自分から広瀬君を理解していきます。4巻で心臓がなくとも何らかの関係性を構築できたことを踏まえるならば、心臓があるからこそ、大鳥先輩は心臓を軸に広瀬君と「仲間」になるとも言えるでしょう。
 それに対し、広瀬君は大鳥先輩を異邦人ないし自分の生活に急に割り込んだ誰かというところを起点に理解していきます。そして、最初は家族のために仲間になり、その後も心臓をくれた人だから仲間になるのではなく、「救ってやれる」(1巻)から仲間になります。それからも、広瀬君は大鳥先輩を心臓を介さずに理解し、受け入れようとしてきました。心臓を通して広瀬君を理解してきた大鳥先輩に対し、8巻では広瀬君が心臓を大鳥先輩とのかけがえのない絆として認識するようになり、ユーシフト族に対して「それは俺のだ!もらったんだ!/一生大事にするって…約束したんだ!」(8巻)と言うのです。広瀬君と大鳥先輩にとって二人の絆が何によるものか、心臓と相手自身のどちらが絆を作っているのかが入れ替わって描かれるのが8巻なのです。
 広瀬君と大鳥先輩は「心臓」を通して繋がっています。心臓は大鳥先輩にとって広瀬君との「仲間」としての絆になりますが、逆に広瀬君自身への理解を遠ざけてしまっていました。そもそも心臓だけでは二人の関係は「形」にすぎず、物語を通して大鳥先輩は心臓が与える「仲間」という形を乗り越えていくのです。そして、それを補完するように広瀬君が心臓を通して二人の絆を確認していくのです。

6.刻印

※『魚の見る夢』のネタバレがあります。読み飛ばしていただいても構いません。

 話は変わりますが、『魚の見る夢』で絆を描くうえで重要なものがありました。それは、巴と九条の関係にありました。「これで私のこと忘れられたくないでしょ?/お互いの気持ちがつながって…二人の扉が開くの/私はその瞬間を刻み込んだだけ」「これは刻印なのよ/私と巴の」(2巻)と、九条は巴が絶対に忘れられないように巴を深く傷つけます。九条にとって、傷が残ることが二人の絆になるのです。しかし、それは「瞬間」でしかありません。九条にとって「長い「時」は私たちに必要ない」とはいえ、固定化されてしまったそれは形骸化を免れません。
 さて、傷をつけられた後のある夜、御影の「これからの巴にだって/そばにいてくれる人はいると思うんだけど?」という言葉に巴は「でも九条は…」ともらします。巴にとっては、自分のそばにいる人間は九条だったのです。それほど大きな存在であったために、御影が「これからだってそばにいてやれるわよ/私のこと受け入れてくれる?」との言葉に、脳裏に浮かんだのは「忘れないで/一生」という九条の言葉なのです。
 そこで、巴は「まだだ/このままじゃ終われないよな…」(2巻)と決意します。そして、卒業式の日、巴は九条と再会し、「さよなら」と笑顔で別れを告げ御影のもとに飛び込みます。そこには裏切られた悔しさはもちろんあるでしょう。しかし、巴にはそうすることが必要だったということもあるのでしょう。九条の事があるから、刻印を刻まれたから、御影の事を受け入れられないということもあったのでしょう。
 これを受けても、九条は巴との距離を感じつつも刻印を信じて前を向いて生きていきます。そして巴も「実はすごくつらいんだ…悲しいし/手の震えが止まらない…」と苦しみながらも、御影に支えられて前を向いていきます。
 二人の間に確かに傷はある。それでも、その傷と別れを告げることが出来る(ナツは「巴を手に入れたと思っていたんだろうが…残念だったな!」と九条に言葉を投げつけています)。前を向いて進んでいくことが出来る。それが「刻印」になるか、結局分からないのではないでしょうか。

7.傷跡

 『ひとりぼっちの地球侵略』にも傷が出てきます。それは、広瀬君の胸の傷です。しかし、それが描かれることはありません。1巻の冒頭に大鳥先輩が岬一の胸に触れると同時に、心臓が機能し傷が治癒するからです。
それからしばらくして、プールで岬一君が水着になった時に「胸の傷は本当に何にも残ってないんだね。/ちょっと勿体なかったかもね」(5巻)と言います。胸の傷はもちろん侵略者たちに付けられたものですが、その傷は「そりゃあ酷いものだったよ、心臓がえぐれてたんだからね」(1巻)と、心臓のところについた傷だとわかります。大鳥先輩にとっては自分の付けた傷ではないにせよ、その傷は自分が心臓を与えたところに傷であり、心臓を与えたという印にもなりえたのでしょう。だから、大鳥先輩は傷が消えてしまったことで、ふたりの絆になりうるものが消えたのだと感じ「勿体ない」と思ったのです。

8、まとめ

 さて、ここまで『ひとりぼっちの地球侵略』と『魚の見る夢』の登場人物の関係について書いてきました。『ひとりぼっちの地球侵略』の広瀬君と大鳥先輩は心臓でつながりつつも、それ以上の関係を築きつつあります。大鳥先輩が広瀬君を心臓を介さず理解していく一方、広瀬君は大鳥先輩の心臓を受け入れていきます。また、岬一と凪は双子ではありますが、それぞれ異なる人間として独立しているどころか対立さえしており、8巻ではすれ違う様子も描かれております。『魚の見る夢』の巴と御影も、それぞれが重層的な立場を担いつつも、最終的にはそれを崩しにかかります。
 これらを通して、何が彼らを結び付けているのかということを再考しなければならないように思います。『魚の見る夢』では、「血縁」と「首輪」がありました。「首輪」は巴の気を引くことはできましたし、枷として機能しました。しかし、御影の望む関係は「首輪」では得られない。あくまでも引き付けることにしか使えないから、必要なくなるのです。また、血縁についても、巴は血縁による形を望むものの、御影によって否定されてしまうのです。結局、巴も御影も、むきだしの自分たちを受け入れることになります(ただし、親子のつながりには注意する必要があります)。また、巴と九条の間の「傷」はどうなったかを知る事は難しく、ただそこには二人のある「瞬間」があるだけでしょう。
 一方、広瀬君と大鳥先輩の間には「心臓」があり「傷」がありました。「心臓」は大鳥先輩から広瀬君を広瀬君と認識する機会を奪い、自分の心臓を持つ人間として認識させました。二人の関係は切っても切れない縛り付けられるような関係になったのかもしれませんが、二人がお互いに相手そのものを認識していったわけではありません。広瀬君は早い段階から大鳥先輩を大鳥先輩と認め手を伸ばしてきましたが、8巻になってようやく「心臓」を超えて繋がっていくのです。そして「傷」は二人を繋ぐものと期待されたものの、もうありません。
 岬一と凪は双子として生まれており、10年前の幼いころは確かに岬一は凪の事を大切思っていましたし、凪も岬一へと思いを向けるようになりました。しかし、岬一と凪の「パーフェクトワールド」は大鳥先輩に阻まれ、現在は大鳥先輩をめぐって対立をしています。さらに、凪から岬一への一方的な執着は見られるものの、岬一にはそのようなものはありません。それどころか、すれ違いの様相を呈しています。
 確かに、「心臓」や「血縁」といったものは彼らを結びつけるように作用をしています。しかし、『ひとりぼっちの地球侵略』も『魚の見る夢』もそれはだめだと、形にすぎないと、その先へと進んでいきます。誰かを繋ぎとめるには、「心臓」といったものでは駄目なのです。あくまでも、それを乗り越え自己がぶつかりあうしかないのだと、広瀬君と大鳥先輩、巴と御影は体現しています。そうすることで、本当にお互いが一緒にいることが出来ると。それだけに、広瀬君が大鳥先輩を「心臓」を介して理解しようとし始めたことは見逃せません。「好きな人とだったら/溶けたくなるよね」(2巻)と御影は言います。一緒にいることではなく、一つになることを広瀬君は受け入れたのかもしれません。一緒にいるだけではなく、一つになるために「心臓」があるのかもしれません。
 『ひとりぼっちの地球侵略』はまだ完結していません。ここに書いたことが間違いである可能性は大いにあります(現段階でもそれが明らかという可能性も)。それも含めて、今後どうなっていくのかを楽しみに見守っていきたいと思います。

9.あとがき

 初めまして。駒々真子です。普段は別所で別名義で活動しております。今回の記事は、さいむさん主催の『ひとりぼっちの地球侵略』のブログ大会の「読み込み部門」の参加記事です。先日さいむさんにブログ大会に誘われまして、もともとこの作品に関心があったこともあり、せっかくなので頑張ってみました。色々思うところがあってこのようなテーマで書いていったのですが、『魚の見る夢』未読の方をまる無視し、もっと削れるだろうにやたら長いまま投稿したり、そもそも内容がこんなのだとか(特に最後投げっぱなしという)、申し訳ないです。なにはともあれ、ここまで読んでくださってありがとうございます。
スポンサーサイト
TB:0 CM:0 admin page top↑
<<赤髪の白雪姫(感想) その5 * HOME * 赤髪の白雪姫(感想)その4>>
コメントの投稿 














管理者にだけ表示を許可する

 

*Comment  Thank you*
comment
trackback
trackback URL
http://komagomamako.blog.fc2.com/tb.php/19-9f4c373b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
* HOME *