赤髪の白雪姫(感想) その13
2016 / 01 / 20 ( Wed ) 14:08:33
あきづき空太『赤髪の白雪姫』(アニメ)(ボンズ/原作:漫画)

赤髪の白雪姫 オリジナルアニメDVD 感想 ――ゆるやかな時間――

1.はじめに

 去る1月5日、めでたく『赤髪の白雪姫』第15巻が出ました。オリジナルアニメDVD付特装版もあって、私はもちろん通常版と両方買いました。章と章の間に挟まれたちょっとした日常回みたいなところもあって、このあたりはTVシリーズだとやる余裕ないだろうなあとか思ってたので、アニメ化されたのは本当に良かったです。特別編とかいろいろ盛り込むという話もまた期待を高めてくれました。そんなこんなで、簡単に感想でも。

2.漫画の特装版付OVAとして

 アヴァンでの薬室長ガラクのキャラクターをはじめ、全体的にキャラクターが原作寄りなんですよね。アニメだとガラクって結構まともな方ですけど、完全にメッキがはがされてて思わずにやついてしまいました。アニメのミツヒデの余計なひと言の追加がやや削られている感じだったり、木々とミツヒデの関係なんかもそんな風に感じます。
 また、全体的にコミカルな感じで仕上げているところなんかもですよね。ただ、背景などの効果を使うところは、原作とは違って、以下に原作がテンポと表情でコミカルさを演出しているのかを感じさせてくれることにもなったり。

3.アニメ第12.5話として

 このOVAは原作第10巻収録の第41話がもととなっており(アニメ版はおおむね原作第4巻収録の第17話まで)、当然原作ではこの間のエピソードを踏まえて描かれています。しかし、このOVAではアニメの第12話の後の話という設定で再構成されているので、細かなシーンの意味が変わってきます。たとえば「いい天気だなあ」「確かに」というミツヒデと木々のやりとりはアニメ版第9話で原作から追加された、二人で星空を見上げるシーンと結果的にではありますが対応しています。デート日和とそののどかさを感じられるのは原作と共通ですが、木々とミツヒデのつながりをより感じさせてくれるようになっています。あるいは、待ち合わせの際に白雪が手にリュウの本を持っているのは緊張を紛らわせるためのように感じますが、原作だともっと単なる興味って感じがしたり。
 変更点からもいろいろ見えてくるものがあります。OVAは気持ちを確かめあってすぐということもあって、待ち合わせで緊張している白雪が描かれていますがいいですね。ここだとオビとリュウは偶然会ったとなっていますが、原作未読者にはオビとリュウが実は結構親しいというのが分からないんだなあとかも面白いなあと思ったり。また、白雪の手紙の相手にラジ王子がいないか心配するシーン、原作だと巳早の名前が挙がるのですが、ここからは原作だとゼンもある程度はラジ王子のことを認めているんだなというのが分かるのも面白かったり(にしても、ここのすねたようなゼンの表情はいいですよね!)。ささやかながら気に入っているのは、「ミツヒデの名前を出すのはやめよう」というゼンの言葉です。これはアニメで追加されているのですが、ミツヒデの扱いが悪いですが、こんな時でも出てくるくらい二人にとって大きな存在というのが逆説的に分かるのが良いんですよ。そして、その後の「ミがついた気がするが」というのは原作とアニメ共通ですが、ここも少し印象が変わったりしますよね。
 「互いに手を取り始まった物語。この先も、ページをめくるその音が、重なる足音が響くように、歩み続ける」という白雪のモノローグも、アニメ版及び原作の第1話のモノローグを踏襲しつつ、綺麗に物語を取り入れていますよね。「互いに手を取り始まった物語」というのは、アニメ版第12話のエンディングなんかでもよく意識されているところですが、「自分の物語」から「ゼンとの物語」へとシフトしてきているような印象も受けるというか。
 あと、作画の印象も少し変わってきたりしてるっていうのもありますよね。動きも良くなっていたり、こういうところも見ながらおおってなりました。

4.ふたりのデート

 デートの描き方に関しては、結構変わっているのですが、基本的にはゼンが白雪任せが間違いなく進んでいる感じですね。ゼン王子もっと頑張れって言いながらずっと見てました。原作でも共通して贈り物の候補にドレスを挙げているあたりどうなのって思ってしまうところとかは変わらなかったりするんですけど。あと、結局「似合う」とか「かわいい」なんて言葉が出てこないところとかも。直前のオビとの会話はなんだったんだとか。
 ちらっと書いた緊張している白雪だとか、初々しい感じが出てるのも良いですよね。服を着てくるっと回る仕草なんて最高じゃないですか(この時、オビはどんな気持ちで待ってたのかなとか想像したくなりますよね)。一緒に行こうかというオビの台詞に戸惑うところに、すごく楽しみにしてたんだっていうのが分かるのもいいですし。白雪の方がゼンのことをじっと見つめているシーンがよく出てきているような気がしたり、こういうのいいなあと思ったり。
 もちろん特筆すべきなのは、展望台でのシーンですよね。白雪がゼンに抱えられてくるっと回るシーンのどきどきするところから(光の使い方とか、背景の鳥とその鳴き声だとかもまた)、「楽しかったか?」「すごく」までの表情の変化の可愛らしいことといったら。こういう時ってもう少し白雪は照れているようなイメージで、こんな素直な白雪の表情はなかなかないのではないでしょうか。
 作者が「~ゼン殿下の幸福な一日~」と茶化して呼んでいた第41話ですが、そういうのを感じる所に、ゼンがミツヒデたちにお土産を渡した後に部屋でデートを振り返る所がゼン一人が描かれるんですよ。それが、ゼンも白雪も描かれ、しかも「ありがとう」が重なるところとか二人にとっての大事な思い出なんだなと感じられるのが見てて幸せになります。二人の声が重なるって、第11話の最後のモノローグなんかも想起されていっそう胸を打ちます。
 あとはもうちょっとあっちこっち回っているような描写が見て見たかったなあというのも本音としてはあったり。

5.おわりに

 アニメ版第12話で「ゆるやかな時間」という言葉が使われましたが、まさにそういう時間が流れていてなんて素敵なんだろうと繰り返し繰り返し見てました。ゼンと白雪の距離が縮まるような描写はどこか劇的な物が多かったのですが、そうではない「ゆるやかさ」で自然な二人が良いんですよ。貴重なゼン、ミツヒデ、木々、オビの四人のシーンや側近たち三人とか、なかなか見られない組み合わせが見られたのもとても嬉しいです。TVシリーズとはまた違う感じに仕上げてきていて、OVAだからできたこともいっぱいあったんだなあと、見れて良かったです。

6.おまけ

 いろんなオビが見られたのはもう最高すぎて。「そんなだからいまだにお嬢さんにかわいいとか気の利いたことが言えないんですよ」っていう時のかっこよさ、その後の返答でゼンを笑う時、ミツヒデに「はい、口説いて」と言う時の楽しそうな所からミツヒデが言うまでの期待のこもったまなざし。食事のシーンだけで一体どれだけ見どころがあるんですかって感じで。「ださあ」とか「まぶしー」なんて演技も、すごく印象に残ります。いいなあ、岡本さんの演技も作画もって言い続けてました。
 正直、TVシリーズでは見せ場の少なかった木々の大活躍っぷりも良かったです。食事シーンでも無言ながらいろんなものを見せてくれます。ミツヒデが「俺と木々がついていくのは」で何言っているんだみたいな表情をして、「デートにでかけるんだもんなあ」と言うところであきれたようにそっぽむくところとか。ショートカットの木々とか、ちょっと幼い感じでかわいいとか。原作を読んでいる組からすると、ミツヒデを閉じ込めたシーンとか、相当にやにやしてしまったりしたのではないでしょうか。
 ミツヒデについても触れておくと、木々とデートに対して「そういうのもありかも」って言うのが意外で。もっと照れるというか、無理だろうみたいなリアクションかと思ってたんですけど。まじめに考えてまじめにありと思っているところが可愛らしいです。あと、ラストの「ほら見ろ七色に輝いているぞ」っていう必死のフォローが、7話のラジ王子の「倉庫ー!」って必死な様子っぽくて笑ってしまうとか。
 実は白雪とゼンが二人そろって私服でいるのって、ここが初めてじゃないのかなと思うと嬉しくなります(原作だと第2話で私服のシャツをゼンが着ているんですけどね)。ゼンの私服、色合いがちょっとモブっぽいと思ったのは内緒です。二人ともちょっと珍しい色合いというか、普通の人っぽい感じも受けたりしました。
 今更ながら気づいたのですが、ゼンが「そばにいる者に、臣下として振る舞われるのは少し苦手なんだ。だから三人の時は敬称も敬語も使わないでくれるとありがたい」という台詞ですが、第9話でアトリのことを「信じたかった」という台詞、そしてミツヒデの「誰が味方か知ることです」といった返答など、あの時のシーンから前に進んだんだなと感じさせてくれるんです。ゼンはそばにいる二人を信じられるようになったのでしょうし、そして特別な関係も望んでいるのだろうと思うのです(その前に、ゼンがミツヒデに「お前(キスとか)出来なさそうだもんな」という台詞も、ミツヒデに打ち解けたんだなと感じられるのがまた嬉しいのです)。TVシリーズでは後半は王子としてゆれるゼンがよく描かれたりしていたので、そういうシーンとの距離が近いからこそ、こういったゼンが信頼するシーンが光ります。また、きちんと確認していないのですが、アトリはゼンのことを一度も呼び捨てにしていないんですよ。あの時、確かにゼンの一番そばにいたのはアトリなのにです(しかも人目につかないところで会っていたにもかかわらず)。そういう距離感があったからこそ、ゼンが二人に呼び捨てにしてほしいという良さがでてくるというのもあります。
 それと、第12話で「おれはこれからのことを、お前らを外して考える気はないからな」というゼンの台詞にオビが「あの人、なんかずるいですよねたまに」とぼやくシーンがあるんですけど、OVAもお土産を渡してからさも「明日からまた頼む」って言って部屋を出ていくシーンもやっぱりずるいですよね。照れも何にもなく、ただ当たり前のようにさらっと言ってしまうところとか(ちなみに、原作で白雪の顔を見て「(欲しいものがあれば)贈りたいんだが」と言うところが、アニメではアップルパイを食べながら白雪の方を見ず何気なく言う所にはおおっとなったり)。
 言いたいことは他にもまだまだあるんですけど、締めらしく最後はEDについて。TVシリーズでは「絆にのせて」だったのですが、そのCDに収録されている2曲目「銀世界」を持ってきたのはものすごくびっくりしました。CDはよく聴いていたのでなじみのある曲だったのですが、一瞬なんだか分からなかったくらいです。最初は映像と合わないなあと戸惑ったのですが、本編の映像を挿入したシーンでなにもかも吹き飛ばされました。タイミングとか雰囲気とかがものすごく合ってましたし、このシーンってこんなに良かったのかと改めて思わされて、最後の最後までお楽しみがあって本当にずるい出来でした。
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