ハルチカ(感想)
2016 / 04 / 23 ( Sat ) 23:08:20
初野晴『ハルチカ~ハルタとチカは青春する~』(アニメ)(P.A.WORKS/原作:小説)

『ハルチカ』感想 ――青春の特権――

1.はじめに

 去る4月17日にあげむらえちかさんと『ハルチカ』のツイキャスをしました。それに臨む前に、これまでのツイートを踏まえつつ軽いメモを作っていましたので、簡単にまとめ直しました。
 えちかさんとは、惜しかったよね、もっとやりようがあったよねみたいなことは何度か言い合ったのですが、そういう願望めいたことなんかも含めて書いていこうかなと。

2.エゴイスティックに

 「誰かに出会う奇跡と、解き明かした謎と、人の心に潜む秘密の物語」そんなモノローグで『ハルチカ』は始まります。人の心の奥に踏み込んでいくのがこの作品なんです。
 それが強く出るのが第2話と第3話です。第2話では、亡くなった弟への後ろめたさに捉われていた成島に対し、ハルタは形見のルービックキューブに色を塗りました。あるいは、マレンに対して「退出ゲーム」を画策しています。
 成島さんに対しては目の前である意味形見を壊すというような行為をしています。色を塗る時の、成島さんの強い抵抗からもさながらショック療法のようにさえ見えます。また「退出ゲーム」の中で、マレンは「ここに僕の故郷はない」と激昂しています。
 親しき中にも礼儀ありではありませんが、私たちは他人の心の奥深くに触れることは避けるものです。「家庭の事情」なんてその最たるものでしょう。それにあっさり触れてしまっていること、それがこの作品の特徴のひとつですが、眉をひそめる方がいても不思議ではありません。
 ただ、私にとってはここが気に入っているところでもあります。
 これらはどちらも「部員集め」という目的のもとに行われており、そのエゴイスティックで功罪の見えるところが、ひとつの青春物語を見せてくれているように感じたのです。第12話でハルタの口から語られた、「自分たちならどこまでだって行けるって信じて、がむしゃらに努力する」という「青春の特権」を間違いなく振り回しているのです。
 第9話では、ひとりの教育実習生の人生を大きく変えたかもしれません。これも、簡単に立ちいっていいことでは到底ありません。でも、それを自分たちの為にやってのけたのです(事が大きくなったのは結果論ですが)。「青春」がある意味で極めて危うく描かれていたということは、私としては魅力的でした。
 だからこそ、この路線が維持されなかったのは残念でもありました。先日のツイキャスでえちかさんは「吹奏楽を道具にしている」と仰いましたが、同じように「謎解き」も仲間集めの道具として徹底してくれたら良かったのにと思います。何のために謎解きをしているのか、それがよく分からないことが多かったというのが本音です。もっとエゴイスティックに、「青春の特権」を振り回して欲しかったのです。

3.自分の意思で

 「部員集め」のために幾度か謎解きが行われましたが、部員になることを決めたのはあくまでも彼ら自身です。ここもまた私の好きなところです。
 第3話で、「退出は自ら進んで行わせるべきだ、そう思ってるんだろマレン」というハルタの台詞がありました。そして、第3話ではこの台詞に基づき、マレンは自ら進んで退出=前に進みます。そして、再び吹奏楽を始めます。
 もちろん、ハルタは部員集めのための、でも「みんなが幸せになる脚本」を書いています。その点では、彼は部に引き込まれたと言えますし、部に入るための心理的障壁を取り除いてもらっているとも言えるかもしれません。しかし、あくまでも入部したのはマレン自身であり、成島さんのような半ば追い払うためのいい加減な口約束のようなものも存在しません。謎を解いたら自動的に仲間になるというものではないのです(ただし、この点に関しては見せ方が不十分だと感じないこともありません)。
 特に芹澤さんはそれが顕著です。彼女が部員へと加わるのは最終話のラストであり、第6話の「スプリングラフティ」ではありません。第6話では吹奏楽部の面々に一定の親しみなどを覚え、それ以降はチカに指導をするなど吹奏楽部の準部員のような存在になりました。
 プロの音楽家を目指してきた彼女にとっては、吹奏楽部の音楽は彼女のしてきたものとは違う音楽です。しかし、聴覚に異状をきたした結果、彼女は自分の音楽の道を考え直さなければならない状況にもありました。彼女なりのチカ達への思いと音楽への葛藤が、この宙ぶらりんな時期を生み出したのです。
 青春の物語として、各キャラクターがそれぞれの思いを持って動くというのは、私の目にはとても魅力的なものに映ります。その象徴的なキャラクターとして芹澤さんの存在はあるのかもしれません。
 しかし、第6話から芹澤さんについては比較的丁寧には描かれてきたものの、ここももっと力を入れられればとは思わずにはいられません。最終話のハルタの「チカちゃんはみんなの心をといた」というのが、もっとはっきりと芹澤さんのことを指せればと(ここに関しては、成島さんやマレンの心をといたのもハルタと言わざるを得ないと思っております)。

4.ハルタとチカ

 文句なしに面白いのは、ハルタとチカのキャラクターです。チカはお転婆というかにぎやかで、ハルタはしっかりしているようでなんだかんだ馬鹿っぽくて、そういう二人のでこぼこさがすごく面白いんですよね。
 チカもハルタもお互いにほぼ遠慮がないんですよね。たとえば、第3話ではハルタは「オーボエはサックスに恋をしている」と助け船をだしたりするのですが、チカに対しては恐ろしいくらいデリカシーがなかったり。チカもチカで跳び蹴りを食らわせたりしますが、当然他のキャラクターにはそんなことはしないですし、成島さんをはじめきちんと他人を気遣ったりしています。
 この二人が持ち味を発揮して物語が進んでいくので、二人が好きならばそれなりに楽しめるのも魅力といえば魅力です。ただ、二人で無理に回しているとも言えてしまうので、バランスを欠いたのもまた否定できないかなと思っております(たとえば、マレンが部長と言われても困った方は多いのではないでしょうか)。

5.まとめ

 そんなこんなであれこれ書いてきましたが、『ハルチカ』は絵智佳さんが仰ったように、もっと面白くできそうなんですけれども、ボタンの掛け違いというか、惜しい作品だったと思います。個人的には、「青春」を軸にもっと各エピソードに共通するような軸を設けるとか、芹澤さんをもっと掘れたらと思います。
 ただ、そういう残念さはあるものの、ハルタとチカはとても魅力的なキャラクターでしたし、可能性自体は感じさせてくれるという点で、それなりに良い作品だったのではないかと思っております。

6.おまけ

 なんだかんだMVPは第7話の檜山君です。あのラジオの胡散臭さ、岡本さんらしくて最高でした。
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