図書館の魔女(感想)
2017 / 09 / 10 ( Sun ) 14:49:01
高田大介『図書館の魔女』(講談社文庫)

『図書館の魔女』感想ーー高い塔の物語

1.はじめに

 信頼しているフォロイーさんがかねてより強くいろんな方にお勧めされていたのでやっとのことで読みました。なんとなく『獣の奏者』みたいなイメージで読み始めたんですけど、当たらずとも遠からずという感じではありました。ただ、素敵さにかけてはもう期待通りだったのです。感想記事なのでネタバレとかは当たり前にやっていきますが、いちおうは未読の方も意識しつつ書いていこうとは思ってます。
 といって書き始めたのですが、何分読み終えたのが2週間近く前なのでうまく言葉にできず、私の好きなポイントに空いて、脈絡なく2,3簡単に書くのにとどめようかと思います。
2.作品紹介

 本作は、一ノ谷という土地にある塔の形をした図書館(通称「高い塔」)を舞台としたファンタジーものです。山暮らしの主人公キリヒトは、共に暮らしていた先生に図書館の主マツリカに仕えるように言いつけられます。そうしてキリヒトが出会ったマツリカは若い少女で、一切の口がきけず主に手話でやりとりをしていました。先生から手話を習っていたキリヒトは、マツリカの通訳として仕えることになりました。そして、マツリカの両腕ともいえる司書のハルカゼ、キリンとともにマツリカを支えていくのです。
 図書館は、古今東西の文献を集める言葉の粋であると同時に、王宮とも議会とも異なる国の第三極でもあります。マツリカはその主として、一ノ谷の内憂外患を、図書館のやり方として立ち向かっていくのがもう一つの筋でもあります。

2.指話のこと

 何を差し置いても語りたいのが、指話だと思うんです。主人公のキリヒトとマツリカは、最初こそ手話で語り合いますが、それは指話へと発展するのです。手と手を合わせて、指を通じて言葉を交わすのです。
 手と手の中に言葉がある。それだけでもう好きな人にはたまらないシチュエーションだと思うんです。もちろん、魅力はそれだけではないのです。もともと、言葉というのはどういう形をとっても生きたようであるというのがこの作品のひとつのテーゼなのですが、その生々しさがまたすごいのです。声に表情をつけるように、指の動きに表情をつけることで、声にも勝るとも劣らない豊かな言葉を生み出すことができるのです。
 初めて指話を試したふたりの、とりわけマツリカの様子は忘れられません。まだふたりとも指話に慣れず、マツリカからキリヒトに言葉を伝えることしかできない状態なのに、言葉にいろんな表情をつけていって、それにキリヒトが応じるのがうれしくて仕方ない。そのやりとりが、たまらなく愛しいのです。言葉でつながる熱が、言葉を愛するマツリカが私には愛しいのです。
 指話はキリヒトがマツリカの「声」としての力を遺憾なく発揮できるように、図書館の主自身が編み出したものです。マツリカの生み出した「言葉」(を表現するもの)です。キリヒトがマツリカの話し相手と正対できるようにすること、マツリカの言葉を即座に声にできること、そのために適した形態として編み出されたものです。マツリカの「言葉」で、ふたりが手の中で言葉を交わす。あるいは、マツリカの言葉をキリヒトが声にする。それは、ふつうの「言葉」のやりとりとはかけ離れた不思議な形であり、それゆえふたりの秘め事のようにさえ思えてきます。

3.マツリカのこと

 本作のメインヒロインである、図書館の主マツリカです。タイトルにこそ魔女とあるものの、別に魔法を使えるわけではありません。図書館という神秘性や先代をはじめとした主たちの優れた洞察力など、様々な要因が彼女をそう呼ばせています。ほんのなんてない「言葉」から多くを読み取るその手腕であったり、言語学をはじめ「言葉」にまつわる高い見識、そして相手の考えを読み取りはるか先まで見越して一挙手一投足まで慎重にふるまうその先読みの力、どれをとっても魔女の名にふさわしいでしょう。
 とはいえ、近くで見るマツリカはまた別の側面があるわけです。けっこうだらしがない、酒豪、海がこわい、諧謔趣味があるようなないような……年相応なところもあるけれども、それ以上に図書館の主であるわけですよ。
 私がマツリカを図書館の主たらしめているのは、そういった数々の部分以上に、彼女が今代の高い塔を作り上げたからだと思うのです。高い塔には高い塔としての役割が求められ、それをマツリカは果たそうとしています。でも、大事なのはそこではなくて、ハルカゼとキリンといった人々を取り込み、あるいは離れでは厨房での食事をしたり、そんな風に人同士のつながりを通して彼女の高い塔を作り上げているのです。
 「図書館」は言葉というのはマツリカの考えですが、言葉と人、それが「高い塔」なのかもしれませんね。気に入った者に指を鳴らして名前をつける、ハルカゼやキリンのように本当に大事であれば打算抜きで守ろうとする。そして、キリヒトのその在り方をどこまでも痛ましく思ったり。キリヒトと別れがたく思うのも、アカリと共に在りたいと願うのも、マツリカの良さだと思うんです。

4.ハルカゼのこと

 私がいちばん好きなのが、マツリカの右腕ハルカゼです。図書館の頼れるお姉さんとして、マツリカやキリヒトを陰に日向にサポートしたり、物腰の柔らかさだったり。雰囲気の良さがとてつもないのです。最初にマツリカの侍女っぽい現れ方をしたときはどこかよそよそしさを感じたんですけれども。自分の世界を持っている人で、人と鉱物などが好きで、時にはそれでキリヒトに対して不機嫌になるようなところであったり。
 ハルカゼで何より好きなのは、マツリカへの尊敬の念なんですよ。マツリカのために、実家を敵に回してでも、彼女のそばに仕えることを決めたあの瞬間。マツリカの手を取って、自分たちが守るんだと告げた瞬間。あの瞬間を、マツリカとキリヒトが手で会話をしたあのシーンに負けないくらい好きになってしまったのです。声を殺されたマツリカの苦しみが、ハルカゼにとってもどれほどのものだったか、マツリカを見るよりもつらかったかもしれません。あとは、もうちょっと最後の方で出番があれば良かったんですけどね……

5.おわりに

 ずいぶん時間が経ってしまったために、書き残したかったこととまるで違うような文章になってしまって、自分でも変なことを書いたなあとは思います。作中で描かれる「言葉」の世界観であったり、「言葉」を超えて通じ合う高い塔の住人たちの在り方だったり。一ノ谷をめぐる大きな戦いも、手に汗握るようで面白くもあるのですが、「高い塔」は人と言葉でできている、そんな素敵な物語だったと思うのです。
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